歯周病とは
歯周病は、歯の表面についた細菌(プラーク中に含まれる歯周病菌)によって、歯の周囲(歯ぐきや骨など)に慢性的な炎症がおこり、歯を支えている骨が溶けていく病気です。歯周病が重症化すると、最終的には歯が抜け落ちてしまいます。「沈黙の病」「ありふれた病」「糖尿病と歯周病」・・・歯周病の特徴について、これら3つのキーワードを足がかりとして説明していきましょう。





「沈黙の病」である歯周病
歯周病にかかっていても、相当進行するまで、痛みがありません。このため、歯周病は沈黙の病(=silent disease)と呼ばれています。
- 歯ぐきが赤くはれる
- ブラッシング時に歯ぐきから出血する
- 歯ぐきが下がって歯が長くなる
- 歯がしみる
- 歯が揺れる
- 息が臭い
- 食べ物をかむと痛い
などの症状があれば、歯周病の可能性があります。しかし、このような症状がなくても、歯周病が進行してきている場合がありますので、成人を過ぎたら少なくとも1年に1回、できれば2~3回は検査を受けることをお勧めします。
「ありふれた病」である歯周病
平成23年に厚労省が実施した歯科疾患実態調査では、成人の約8割が歯周病にかかっていることが明らかになっています。歯周病はそのくらい多くの人がかかる「ありふれた病(=common disease)」と言えます。また、2005年に実施された全国抜歯原因調査では、歯を失う最大の原因(全体の42パーセント)が、歯周病でした。歯を失う原因の第二位が、むし歯(全体の32%)ですので、歯周病がむし歯同様に、決して侮ることのできない存在であることが分かると思います。
糖尿病と歯周病
糖尿病があると、歯周病が進行しやすいことは、以前から認知されており、歯周病は「糖尿病の合併症」であるともいえます。したがって、糖尿病の方は、お口の中の衛生状態に特に留意する必要があります。また、最近は、歯周病が糖尿病の治療効果に影響を及ぼすこともわかってきました。特に2型糖尿病(先天性でなく、生活習慣病として起こる糖尿病)の場合、歯周病の治療をすることで、糖尿病の数値が改善することがあります。糖尿病の治療をお医者さんで受けているにも関わらず、なかなか数値の改善がみられない方は、歯周病のチェックも併せて行うことをお勧めします。
歯周病の検査
歯周病は、一つの口の中であっても、歯1本1本、部位ごとに進行状態が異なるという特性があります。このため、全ての歯のなるぺく色々な箇所を検査するのが望ましいです。主に次のような検査があります。
- 歯周ポケット測定(深さ、出血点の測定)、歯の動揺
- エックス線写真
- 口腔内写真(口腔内カメラ)
歯周ポケット測定
歯と歯ぐきの間にある溝を歯周ポケットと呼びますが、このポケットの深さを測定することで、歯周病の有無や進行度を確認することができます。1本の歯につき複数箇所を測定することがほとんどですので、全てを計測するにはそれなりに時間を要します。健康な歯の歯周ポケットは1~3mm程度です。歯周病が進行すると歯ぐきが腫れるため、歯周ポケットは深くなり、歯の周りの骨も溶けていきます。あくまで目安ですが、深さが4~5mmで軽度の歯周病、6mm以上ならば重度の歯周病が疑われます。 また、ポケット測定の際に、出血するかどうかは、炎症が今あるかどうかの重要な指標です。出血がある場合は、歯周病がさらに進行する可能性があるということです。


エックス線写真
当院では、上下の歯すべてを1枚の写真として撮影するオルソパントモグラフィー(通称「パノラマエックス線写真」)にて、まず全体像を確認します。その後、必要に応じて、小さなフィルムで2~3歯の精細な画像が得られる口内法エックス線撮影を行い、詳細を把握します。これらの検査により歯の周囲骨(歯槽骨)がどのくらい溶けているかが分かり、歯周病の進行度を推察することができます。
歯周病の治療
当院では、保険治療のルールに従い、治療を行います。歯周基本治療と呼ばれるものがメインとなります。 歯周基本治療では、歯科医師や歯科衛生士が、歯磨きの仕方や口腔衛生に関する留意点をお伝えしつつ、歯の清掃を行っていきます。
見える部分の歯石除去
まずは、ある程度見える場所の歯石や歯垢を除去します。これは原則として全ての歯に対して行います。通常は1~2回のことが多いですが、3回以上の通院が必要になることもあります)。歯石除去が一通り終わったら、治療効果を判定するため、歯周ポケット測定を行います。
歯周ポケット内部の歯石除去
その後、歯周ポケットが深い部分に関しては、歯周ポケット内部の見えない場所の歯石を除去していきます。こちらは、全ての歯を清掃するとは限りませんので数回で終わることもありますが、全ての歯で行う場合には6~10回程度の通院が必要となります。また、歯周ポケット内部の歯石を除去する際、そのままだと痛みを伴いそうな場合は、むし歯の治療の時と同じように局所麻酔をすることもあります。
メインテナンス(定期検診)
むし歯、歯周病の両方に言えることですが、治療が終わったからといって、もう歯科医院へ行かなくても良い、ということにはなかなかなりません。一旦良くなっても、ご自宅でのセルフケアを油断すれば、また悪くなるということはよくあります。そのため、定期的なチェックは重要です。現在、定期的な受診を保険治療でフォローすることが可能となっています。(保険治療の規則にあてはまらない頻回のチェックやメインテナンスは自費診療となる場合もあります)。定期検診では、歯周ポケットの測定、清掃、むし歯チェック、(必要に応じて)歯磨き指導を行います。